ちゃたろう —戦いの記録—

飼っている猫が突然死にかけ、そして救われた話

#11 7/28(金) どうぶつの総合病院へ(後編)

今回のちゃたろうの症状。

つまり食欲廃絶で吐き続け、目には黄疸が出て肝臓のデータが著しく悪化している原因を特定できたとのことだ。

 

かかりつけ医では原因不明とされてしまったものが、たったの3時間で解明できたというのだから凄いの一言だった。

その原因というのは……

 

胆管にしこり(壁)がある

 

簡易的な図を作成したので貼り付けておく。

 

簡易図

 

誤解を恐れずに言うと、胆管とは肝臓から十二指腸に繋がる道である。

そこを胆汁が流れていく

(途中、脇に胆嚢もあるのだが、高速道路で例えるならPAのようなものなので今は省略)

 

この胆管内に詰まり(しこり)があることで、胆汁が十二指腸へと流れてくれず、肝臓へ逆流してしまっているのが今の状況だ。

故に肝臓のデータが悪化しているというわけだ。

 

さて、この『しこり』とやらが問題だ。

 

超音波検査の結果を画像処理チームに解析してもらったところ、ほぼ高確率で癌だと言うのだ。

 

胆管癌との診断だ。

 

そして癌の場合は、できることが何も無いと伝えられた。

その続きを医師がなかなか言いにくそうにしているので、私のほうで言葉を接ぐことにした。

 

「それはその……このままちゃたろうを連れて帰り、最後の時を少しでも長く一緒に過ごしてください、ということでしょうか?」

 

「……大変申し訳ありませんが、そうなってしまいます」

 

原因は特定できたものの、結局は打つ手なしということだ。

ちゃたろうの最後を看取るしかないのだ。

 

私が何ともいえない反応をしていると、先生が言葉を紡いだ。

そしてこの言葉こそが私に希望を与え、後に決断の助けとなるのだった。

 

「確かに、画像処理チームは高確率で癌だと言ってますが、私たち内科の見解を言わせてもらうと、癌じゃない可能性は十分にあると考えています。もし癌だとしたら、かかりつけ医で入院した際のデータと辻褄が合いません。23日のデータを見ると肝臓を含め全てのデータは正常そのものです。腫瘍はいきなり大きくなるものじゃありませんので、もし癌ならこの日のデータは正常なわけないんです。なので癌じゃない可能性は高いと思います」

 

名探偵かこの人は。

私は素人なので詳しいことは分からないが、確かにその通りだと思ったし、とにかく説得力があった。

 

そしてわざわざ画像を解析するチームがあるというのに、そこで出した結論に反論をぶつけているのだ。

 

病院という組織を考えた場合、専門部隊が出した結論こそが、最終的な結論となりそうなものなのだが……

 

先生の力強い言葉を聞いたとき「この病院、なんか凄いぞ……」と思ってしまった。

そもそも内科と外科が分かれている時点で驚きだ。

更にはこの2つに留まらず、複数の科が存在するのだ。

 

なるほど、事前に調べて出てきた『腕と設備は最高レベル』『最後の砦的な存在』という話は、どうやら本当のようだ。

たった1日で、いや、数時間でその片鱗を見せられてしまった。

 

「我々ができることは2つです。そしてその選択をお父様にしていただく必要があります」

 

お父様!?

 

ああ、確かにちゃたろうの飼い主だからお父様ということになるのか。

人間の年齢に換算すれば、ちゃたろうの方がとっくに年上になってしまっているので複雑な気分だ。

 

それにお父様なんて呼ばれるのは、小学校と幼稚園の先生からくらいのものなので、かなりの違和感があった。まあ、直に慣れるだろう。

 

先生は言葉を続けた。

「選択肢の1つ目は、胆管のしこりを癌だと決定してしまうことです。先ほども言いました通り、この場合の治療法はありません」

 

つまりこのままちゃたろうを連れて帰り、終わりを迎える瞬間まで一緒に過ごしてくださいということだ。

 

「もう1つは、癌じゃない可能性を考えて一先ず入院させ、できる限りの治療を施します。そして体力回復に合わせて検査の種類を増やしていき、胆管のしこりの正体を突き止めていくことです。ここでやはり癌だということになれば、諦めるしかありませんが……」

 

迷う必要などなかった。

後者を選択した。

 

可能性があるのならそちらに賭けてみたい。

今この場で癌だと思って諦めることなどできなかった。

 

入院のお願いをするにあたって、先生からは大体の費用の話をされた。

かなりの高額だ。

(あとでまとめていくらだったか書きたいと思うので、費用の目安についてはここでは伏せておくことにする)

 

「それでは、このままちゃたろうちゃんを預からせていただきます。当面の治療方針としましては、鼻からチューブを入れてそこから食事を流し込んでいきます。点滴は継続して、ステロイドも試してみて胆管のしこりの反応を見たいと思います。これで何も反応がないと癌の可能性がぐっと高まります。あと、面会は事前に予約していただければ可能です。定期的にこちらからもちゃたろうちゃんの状態を連絡しますし、お父様のほうから掛けて頂いても結構です。入院期間の目安は4~5日と考えています。この期間で胆管のしこりの正体を特定できるはずです」

 

大変心強いお言葉だった。

4~5日で特定できてしまうというのだ。

 

4~5日といえば、かかりつけ医に入院した期間と同じだ。

同じ期間で、この病院では原因が判明し、更にその正体の特定までできてしまうというのだ。

設備の差はあれど、ここまで違うものなのか、と感心してしまった。

 

それにしても面会という言葉だ。

人間の病院とまるで変わらない。

 

「ただですね……ちゃたろうちゃんの状態は非常に悪いです。最悪の場合、入院中に亡くなってしまうことも考えられます」

 

こればかりは仕方ないことだろう。

そもそもこの病院までもたないかもしれないと言われていたくらいだ。

いくら入院して点滴するからといっても、良くなるわけではない。

 

緊急連絡先を教え、何かあれば何時でも掛けてくれて構わないことを告げた。

そしてこの日を境に、深夜に電話が鳴るかもしれない恐怖で、熟睡することはなくなった。

この日は、入院費用の内金として100,000円を支払った。

 

 

【今日のまとめ】

  • どうぶつの総合病院へ
  • 食欲廃絶の原因が判明 → 胆管にしこりがある
  • しこりは癌の可能性が非常に高く、もしそうならできる処置は無し
  • 癌じゃない可能性に賭けて、入院することにした
  • 4~5日でしこりの正体を特定できそう

 

おまけ画像

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