ここまでのあらすじ
ちゃたろうの食欲廃絶と何度も繰り返す嘔吐が改善しないため、かかりつけの動物病院へ連れて行ったところ、点滴入院となってしまった。
点滴すれば元気になって戻ってくるだろうと思いきや、食欲は一向に回復せず。
血液検査の結果はどれも正常。
医師は原因不明とし、大きい病院を紹介してくれた。
しかし退院の日の朝から容態が急変してしまった。
目には黄疸が現れ、ヨダレは垂れっぱなしの状態に。
見るも無惨な姿に変わり果ててしまったのだ。
かかりつけ医の言では、明日の大きい病院までもたないかもしれないと。
私はちゃたろうとのお別れを覚悟しなければならなかった。
退院の翌日。
無事に大きい病院へ連れて行くことができた。
この病院は『どうぶつの総合病院』といい、技術・設備ともに世界水準を目指すレベルの病院だ。
到着して数時間で、ちゃたろうの食欲廃絶及び肝臓悪化の原因が判明する。
胆管にしこりがあり胆汁の流れが正常に機能しなくなってしまっているのだ。
現時点でこのしこりの正体は癌である可能性が非常に高いと言う。
癌なら何も手の施しようがないので、死を待つのみとなってしまう。
しかし担当の内科の先生の力強い言葉により、癌じゃない可能性に賭けて治療入院することにした。
入院中も黄疸の数値は悪化する一方で、貧血の進行も始まってしまい、いつ亡くなってもおかしくない状況が続く。
タイムリミットが刻一刻と迫るなか、検査の種類を増やしていくことで、とうとう胆管のしこりの正体を突き止めることに成功するのだった。
その正体は大きな胆石であった。
手術にて除去することが可能であり、成功すれば肝臓も回復する可能性が極めて高いと言う。
元気なちゃたろうに戻るのだ。
今までの病院側の真剣な対応などから、私はこの病院は信頼に値すると結論を出した。
まだ完全なる決心はつかないものの手術に向けて駒を進めることにしたのだった。
本編
ちゃたろうの面会をするも、今日は特に元気が無かった。
最初に私の顔を認識したときは必死に鳴いたものの、その後はぐったりといった感じだ。
黄疸の数値が跳ね上がってからもう1週間になる。無理もないだろう。
続いて、ちゃたろうの面倒を看てくれているスタッフさんと話をした。
ここのスタッフさんは本当にちゃたろうのことをよく看てくれているのだ。
面会に行くたび、ちゃたろうの状態を教えてくれて、私はどれだけ助けられたことだろう。
時には獣医師さんの見解よりも、いつも面倒を看てくれているスタッフさんの話のほうが的確なこともある。
理論より現場を見ている人間のほうが強いのだろう。
そのくらい様子の変化に敏感なスタッフさんたちなのだ。
この日の担当スタッフさんは何度かお話ししたことのある方だった。
ちゃたろうの状態を一通り説明してくれた後、こう言ってくれたのだ。
「最初は癌かもしれないということでどうなるんだろうと、みんな心配だったんですが、原因が判明して手術可能なことを知って、私たちスタッフみんなで大喜びしたんですよ」
この言葉が私の決断を大きく変えたのだった。
この病院を信じる気持ちを揺るぎないものに変えたのだ。
スタッフさんたちの『手術にもっていくことさえできれば勝てる』という自信。
自分たちの医者の腕を信用しているからこそできるものだ。
前から薄々と気づいていたのだが、この病院はチームワークが本当に素晴らしい。
とにかく無駄がなく、最短ルートでゴールを目指しているように思うのだ。
それを達成するには、内科だけでは無理だろう。
様々な科が連携して初めて成立するのだ(科がこれだけたくさんあるのも凄いが)
それでいて、ある科が出した結論を絶対とはしない風潮。
内科の担当の先生が画像処理科の結果を絶対としなかったことは記憶に新しい。
あの場面で内科の見解を示してくれなければ、ちゃたろうはこのステップまで進めてないだろう。とっくに生きてはなかった。
今までのこの病院のやり方、知識、説明、対応などから、信頼するのに十分だったが、この土壇場でスタッフさんの台詞が決め手となったのだ。
……この病院ならやってくれるのではないか。
手術へと踏み切るのにこれだけの材料が揃う病院があるだろうか。
当初は夢物語だったちゃたろうが元気な姿で帰ってくる……もしかしたら実現できるのではないだろうか。
——この病院を信じてみよう。
心配性で疑り深く、病院にはあまり良いイメージのない私の心情をここまで持っていけたこの病院は本当に凄いと今でも思う。
ちゃたろうの手術をどうするかは、家族には私に任せると言われている。
そして私の結論は出た。揺るぎない結論となって。
そんな最高の状態で、外科の先生からの説明となったのだ。
おまけ画像